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青春ものの小説ブログです

あとがき

まさか私がスポーツ漫画の小説を書くとは思わなかった。大方の人もそう思っているだろう。人はなんのきっかけでどうなるかわからないものだ。たまたま「黒子のバスケ」をひょんなことから全巻セットを中古で購入してしまった。きっかけは同人がらみのいざこざからである。しかしコミックは一読して、気に入ってしまった。絵柄もすぐれているし、話の内容もいい。書いてみてもいいかもと思った。それで誰のためでもなく書くことにした。今書き終えてよかったと思っている。いつもの通り、ひとつの物語を語り終えてよかったと思っている。他人のふんどしで相撲を取るのは大好きである。いつもの通り、これはノベライズ編集もの小説に分類される作品だ。

バスケットボールのことはよくわからない。今でも細かいルールなどまったくわからない。高校の時授業でやらされた思い出はある。しかしそれも、間違って自ゴールに入れるという芸当をやらかしてしまった苦い思い出がある。赤司くんのようにわざと入れるなどできるものではない。そういう、一番嫌いな種目が持久走で絵を描くことが大好きで本の虫だった私が、さわやかなスポーツマンたちの小説を書いている。ふだんスポーツニュースなどおよそ見ないし、その年のリーグ優勝の球団名も言えない私がである。まさに何の因果でとしか言えない事態だ。しかし人生とはそうしたものだと思う。そういう2017年の現時点での私である。

話のネタを整理してみると、いくつかあらかじめ既知の仕込みがあって、今回書けそうだと思った。「シュレディンガーの猫」は昔「アインシュタイン・ロマン」というNHKの番組で見たことがあった。赤司くんの眼は猫の瞳に描かれているし、感じも猫っぽい男である。ぴったりではないかと思い使うことにした。また韓国語を学習していたときにたまたまGYAO無料で見た「ハナ・奇跡の46日間」という韓国の卓球映画で、ラストで移動バスで北朝鮮に帰る選手と涙の別れをやっていたので、あれならふだんは京都にいる赤司くんと桃井さんを最後に会わせることができそうだと思った。この映画の試合場面の真剣さは、今回書いた小説に影響を与えていると思う。とにかくどこまでリアルっぽく書けるかと思って書いたのだが、いろいろおかしな点はきっといつものようにあると思う。なお、「エンペラー・アイ」や「ゾーン」についての設定は、コミックのものから変更させてもらった。細かいセリフもコミックと同じではない。特に赤司くんのセリフはまったく違っている個所が多い。それを探す暇人はいないだろうが、よくご了承願いたい。なお私はアニメシリーズはまったく見ていない。Youtubeでコマ切れの動画は見た。しかしそれでは見たことにならないので、見ていないと言っておく。

書いていてやはり高校時代の自分を振り返ることが多かった。箱詰めというのはあの時代の雰囲気からである。タイトルに恋とつけたのは、少しロマンがほしかったからで、箱詰めの猫だとあまりにも赤司くんがかわいそうだからだ。結局「彼」は最後まで何者かわからないまま物語は閉じてしまうことになったが、これは昔読んだ「野獣の書」というアメリカSFの第一巻が好きだったからである。この作品では少年に野獣の霊が憑依していろいろと邪魔をする。言わば永井豪さんのデビルマンみたいな話である。ここも元のコミックの二重人格設定とは違えてある。とにかくいろいろと違ってしまっていて申し訳ない。ただこういう話の方が好きだったのは言うまでもない。だから書いている。

読んでいて赤司くんはこんなに女々しくないとか思う人も多いだろうし、リーグ優勝するぐらいの男なのに桃井さんに告白もできないのはおかしいと思う人も多いだろう。ベッドで丸くなっている赤司くんは高校のころの、そして今もそうである勇気の出ない私である。創作とはそうしたものだ。ただ赤司くんが身上としている教典めいた人生訓は、おそらく彼は黒子たちに負けて帰途についた新幹線の中でも変えないだろう。ドストエフスキーの「罪と罰」に出てくるラスコーリニコフも、シベリヤで老婆を殺した罪は悔いたが、おそらく彼の考えだした天才人の真理は生涯手放すことはできないだろう。男とはそうしたもの、と言えるほど知っていないのは残念だが、人間とはそういう性懲りもないものであり、そういう赤司征十郎という人間が私は好きである。

 

付記・今回はYoutubeでTOTOの「99」をよく聞きながら書いていた。自分の高校大学時代を思い出してのためである。今はこういう曲をパソコンさえあれば好きなときに聞ける。いい時代になったものである。なおこの曲はRPG風アルバムに収録されているという意味もあって、今回の小説の下地のネタでRPGがあったので聞いていました。また、童謡の「山寺の和尚さん」もよく聞いていましたね(笑)。

 付記2・最後の場面の桃井さんの封筒に写真しか入っていない理由について述べよと言われたので言いますと、桃井さんは赤司くんが決勝戦で勝った場合と負けた場合を思い浮かべて、どちらに書いていいかわからず、手紙を書かなかったのです。私の考える桃井さんは、そういう女の子なのです。